ネット選挙の解禁以降、私たちはフェイクニュースや誹謗中傷といった「情報の洪水」に直面しています。
このカオスを突破し、信頼を築くために不可欠な「デザインの力」について解説します。

日本でインターネット選挙運動が解禁されたのは、2013年(平成25年)の参議院議員選挙からです。

それまでは、選挙期間中に候補者がブログやSNSを更新することすら禁止されていました。
解禁によって、ウェブサイトやSNSを使った情報発信、電子メール(候補者・政党のみ)での投票依頼などが可能になり、政治は私たちの手のひらに収まるほど身近になりました。

しかし、10年以上が経過し便利さと引き換えに、私たちは前代未聞の「情報の大洪水」に直面しています。

インターネットは政治参加のハードルを下げましたが、深刻な副作用も生み出しています。

① 嘘と悪口が、真実より速く広まる

ネット、特にSNSの世界では、地味な真実よりも「感情を揺さぶる刺激的な情報」の方が圧倒的に拡散されやすい性質があります。
デマや、AIによる「ディープフェイク(偽動画)」が、真偽不明のまま広がってしまうのです。匿名性を盾にした人格否定も後を絶ちません。

② 「自分と同じ意見」しか見えなくなる

SNSの仕組み上、自分と似た意見の人ばかりとつながりやすくなります。
その結果、「自分の周りの意見こそが世の中の常識だ」と錯覚し、異なる意見を持つ人々を「敵」のように認識して、社会の分断が深まってしまいます。

③ 選挙のルールが複雑で「落とし穴」がある

日本の選挙ルール(公職選挙法)は非常に複雑で、有権者にもリスクがあります。
例えば、SNSで特定の候補者への投票を呼びかける行為(シェアやリツイート含む)は、選挙期間中は自由ですが、投票日当日は一切禁止されています。
知らずにルール違反をしてしまう可能性があるのです。

このような混沌とした状況の中で、決定的に重要になっているのが「デザイン」です。ここで言うデザインとは、単なる飾り付けではありません。
「情報を整理し、正しく、分かりやすく伝え、信頼を築くための設計」のことです。

① デザインは「信頼の証」になる

怪しい情報が氾濫する中で、人は見た目の「きちんとしている感」で、その情報が信用に足るかを無意識に判断しています。
整えられたレイアウトや読みやすい文字は、それだけで「これは責任ある公式の情報です」という無言の証明になります。

② 難しい政策を「一目でわかる」ようにする

年金、医療、外交など、政治の課題は複雑です。
図やグラフ(インフォグラフィック)を使って視覚的に分かりやすく「翻訳」することは、多忙な現代人が正しい判断をするための強力な手助けになります。

③ 「誰ひとり取り残さない」ための配慮

政治の情報は、一部のデジタルに強い人たちだけのものではありません。
高齢者や視覚に障害がある方など、どんな人でもストレスなく情報にアクセスできるように配慮する(文字サイズ、配色、音声読み上げ対応など)。
そうしたデザインは、「国民一人ひとりに向き合おうとしている」という姿勢そのものを表します。

インターネットは政治を身近にしましたが、同時に情報の洪水を引き起こし、私たちを混乱させています。
その洪水の中で、デザインは重要な役割を果たします。

有権者の皆さまへ

流れてくる情報の「見た目」だけに惑わされないでください。
しかし同時に、そのデザインが「誠実に情報を伝えようとしているかを見極める目を持つことも大切です。

分かりやすく、誰にでもアクセスしやすい情報発信を心がけている候補者は、それだけ国民に向き合おうとしている証拠かもしれません。
次の選挙では、政策の中身はもちろん、彼らがどのように情報をデザインして届けようとしているか、その姿勢にも注目してみてください。

政治家、そして政治家を目指すあなたへ

どうか、デザインを単なる「ポスターの見栄えを良くする作業」程度に考えないでください。それは、情報が溢れる中で、あなたの熱い想いや政策を、有権者の心に真っ直ぐ届けるための重要なコミュニケーション戦略です。

混乱した時代だからこそ、丁寧にデザインされた情報は際立ちます
言葉だけでなく、情報の「届け方」にも魂を込めてください。その誠実な姿勢は、必ず有権者に伝わり、信頼というかけがえのない一票となって返ってくるはずです。


【出典】

  1. 総務省|インターネット選挙運動の解禁に関する情報
    (ネット選挙解禁の時期、内容、ルールに関する一次情報)
  2. e-Gov法令検索|公職選挙法
    (選挙運動期間、投票日当日の禁止行為などに関する法的根拠)
  3. デジタル庁|ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック
    (「誰ひとり取り残さない」ためのデザイン配慮に関する公的な指針)
  • 公職選挙法の解釈について
    記事でも触れられている通り、公職選挙法は非常に複雑であり、個別の具体的な行為が法に抵触するかどうかの最終的な判断は、選挙管理委員会や警察、裁判所が行います。
    記事の内容は一般的なルールを正しく説明していますが、すべてのケースを網羅しているわけではありません。
    読者が具体的な行動を起こす際は、必要に応じて専門機関に確認をお願いします。

投稿者プロフィール

KITAMURA
KITAMURA代表
石川県出身。県立工業高校(デザイン学科)・デザイン専門学校を経て、金沢のデザイン事務所等で実績を積み2009年に独立。多くの広告や企業CIを手掛ける中、2000年頃より選挙広報の支援を開始。2022年5月に選挙専門のトーカク株式会社を設立し代表取締役に就任。写真撮影やドローン空撮が趣味