選挙の時だけ見かける議員さんって、普段は何をしてるの? その正体を「デザイン」や「設計」の視点で読み解くと、「街の未来を描き、設計図を書く人」という役割が見えてきます。
今回は、「街づくりの仕組み」について整理しました。
1. 議員さんは「街の使いやすさ」を考える担当
Webサイトやポスターを作るのと同じように、議員さんは「私たちの街」を使いやすく整えるのが仕事です。具体的には、この3つの「デザイン」を行っています。
① 暮らしのルールをデザインする(条例)
学校に校則があるように、街にもルールが必要です。
「公園でボール遊びをしていい時間」「路上喫煙の禁止エリア」「子育て世帯への助成金ルール」など、みんなが快適に暮らすための「条例」という名の仕様書を作ります。
② お金の設計図をチェックする(予算・決算)
みんなが出し合った大切なお金(税金)を、どこに、いくら使うか?
市長から「来年はここに橋をかけたい」と提案された「予算(設計図)」に対して、「その見積もりは高すぎないか?」「本当にいま必要なのか?」と、プロの目で厳しくチェックします。
③ みんなの声を形にする(広聴・一般質問)
「通学路が暗くて危ない」「高齢者がバスに乗りにくい」といった住民の悩み(ユーザーの声)を聞き取り、議会で「ここを改善すべきだ!」と提案します。
いわば、街の「リニューアル案」を出す仕事です。

2. 市長と議員は「車の両輪(アクセルとブレーキ)」
ここが一番の誤解ポイントです。「市長と議員は仲良しチーム」だと思っていませんか?
実は、地方自治の仕組みでは、この二人は「対等かつ、緊張感のある関係」であるべきなんです。
- 市長(知事)
実際に車を走らせる「運転手(アクセル)」 - 議員
行き先や安全を確認する「教官(ブレーキ・ハンドル)」
もし、運転手(市長)が「俺の好きに走らせろ!」とアクセル全開に踏み込んでも、横にいる教官(議員)が「危ない、そっちは崖だ!」とブレーキを踏めば、暴走を止められます。
お互いに厳しくチェックし合うことで、初めて安全な街づくりができる。
これを「車の両輪」と呼びます。

3. 「市」と「県」は、見ている「倍率(スケール)」が違う!
「市議会議員」と「県議会議員」、どっちに相談すればいいの?この違いは、「ズームの倍率(守備範囲)」の違いで整理できます。
■ 市議会議員(ご近所担当:ズームアップ)
あなたの家から歩いて行ける範囲の、生活に密着したことを担当します。
- 道路(ハード)
カーブミラー、防犯灯(街灯) - 施設
近所の公園、公民館、小・中学校 - インフラ
ゴミ収集、水道、下水道 - 相談例
「ゴミステーションのカラス対策をしてほしい」
■ 県議会議員(広域担当:ワイドビュー)
市や町をまたぐ、もっと広いスケールのインフラを担当します。
- 交通ルール(ソフト)
信号機、横断歩道、一時停止の標識 - 道路
街と街をつなぐ大きな幹線道路、信号機の設置 - 施設
県立高校、大きな病院、ダム、一級河川 - 相談例
「隣の市へ抜けるバイパス道路が渋滞して困る」

【POINT!】市道であっても、信号機や規制標識(一時停止など)の設置・管理権限は、原則として都道府県公安委員会(警察)にあります。
一方で、道路の維持管理(舗装、カーブミラー、照明灯など)は道路管理者である市町村が行います。
カーブミラーの例外: カーブミラーは基本的に「道路管理者(市)」の持ち物ですが、警察が設置要請を出す場合もあります。窓口は市役所の道路課であることが多いです。
「防犯」という言葉の定義: 「防犯活動(パトロールなど)」は警察と市民の連携ですが、「防犯灯(ハード)」の設置予算は市町村であることが大半です。
【重要】警察は「県」という大きなチームの仕事
意外と知られていませんが、警察は100%「県」の組織です。
もし警察が「市」ごとにバラバラだったら、泥棒が隣の市へ逃げた瞬間に「ここからは管轄外だから追えない!」となってしまいます。
犯人をどこまでも追跡できるよう、県全体で一つのシステムとして設計されています。だから、交番や信号機、防犯の話は「県議会議員」の担当になるのです。

【Q&A】もし犯人が「県」の外へ逃げたらどうなる?
「ここから先は管轄外だ! くそっ!」という刑事ドラマのシーンを見たことはありませんか? 実は今のシステムでは、そのまま追いかけて逮捕します。
警察は県ごとの組織ですが、緊急時には「日本全国という巨大なネットワーク(警察庁の連携)」に切り替わるように設計されています。
サーバーがつながっているように、隣の県の警察と連携してどこまでも追跡できる仕組み(広域捜査)になっているので安心してください。
まとめ:政治は「みんなで街をデザインすること」
議員さんは、私たちが「こんな街になったらいいな」という理想を、議会という会議室で図面(予算・条例)に落とし込むプロフェッショナルです。
政治と聞くと難しく感じますが、「自分たちの住む場所を、もっと素敵にリノベーションする活動」。 そう考えると、少しワクワクしませんか?

専門情報とファクト整理
地方議員は、地方自治法に基づく「議決機関」の構成員であり、二元代表制の一翼として、首長(執行機関)との緊張関係(チェック・アンド・バランス)を保ちながら、条例制定、予算議決、行政監視を行います。役割分担として、市町村議会は基礎的自治事務を、都道府県議会は広域的事務および警察事務等を管轄します。
- 二元代表制と相互牽制:日本国憲法第93条および地方自治法に基づき、首長と議会は対等な機関として設置されます。議会には「不信任決議権」、首長には「議会の解散権」や「拒否権(再議)」があり、制度として緊張関係(チェック機能)が組み込まれています。
- 事務配分の原則:地方自治法第2条において、市町村は「基礎的な地方公共団体」として一般的事務を処理し、都道府県は「広域的・連絡調整的・補完的事務」を処理すると規定されています。
- 警察の所管:警察法第36条により都道府県に警察が置かれ、第38条によりその運営を管理するのは「都道府県公安委員会」および「都道府県知事(予算等の権限)」であることが定められています。
【注意点・例外】
- 馴れ合いのリスク:制度上は「車の両輪」ですが、実態として首長提案を議会がそのまま通すだけの「追認機関」になっている場合(オール与党化など)、チェック機能が働かず「ズブズブ」と批判されることがあります。
- 政令指定都市の特例:指定都市(人口50万以上の一部)では、本来なら県の権限である「県道」の管理や「教職員」の人事権などが市に移譲されます。
- 消防のねじれ:東京23区に限り、消防は「都(東京消防庁)」の管轄ですが、それ以外の全国の地域では「市町村(または広域連合)」の管轄です。
【出典】
- 総務省:地方自治制度の概要(二元代表制について) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/bunken/gaiyo.html
- e-Gov法令検索:地方自治法(第二条、第九十六条等) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000067
- e-Gov法令検索:道路交通法(第四条) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
- e-Gov法令検索:道路法(第十八条) https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000180
- 警察庁:警察の仕組み https://www.npa.go.jp/about/index.html
公職選挙法の解釈について
公職選挙法は非常に複雑であり、個別の具体的な行為が法に抵触するかどうかの最終的な判断は、選挙管理委員会や警察、裁判所が行います。
記事の内容は一般的なルールを正しく説明していますが、すべてのケースを網羅しているわけではありません。
読者が具体的な行動を起こす際は、必要に応じて専門機関に確認をお願いします。
投稿者プロフィール

- 代表
- 石川県出身。県立工業高校(デザイン学科)・デザイン専門学校を経て、金沢のデザイン事務所等で実績を積み2009年に独立。多くの広告や企業CIを手掛ける中、2000年頃より選挙広報の支援を開始。2022年5月に選挙専門のトーカク株式会社を設立し代表取締役に就任。写真撮影やドローン空撮が趣味
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