最近、ニュースで「中選挙区制(ちゅうせんきょくせい)の復活」が議論されています。 ここで疑問に思うのが、「小と中の違いは分かるけど、大選挙区ってのもあるの?」という点です。
実はこの3つの違いを知ると、なぜ今「中」が推されているのか、そして制度が変わった時、候補者に何が求められるのかが見えてきます。
今回は、この「サイズの違い」と「戦い方の変化」について解説します。
1. そもそも、なぜルールを変える話が出ているの?
今のルール(小選挙区制)が始まって30年。以下のような「限界」が指摘されているからです。
- 「死に票」が多すぎる
1位以外への票が無駄になりやすく、「国民の声が届いていない」という不満が高まっています。 - 党のガバナンス(統制)が強まりすぎた
小選挙区制では「党の公認」が当選を大きく左右するため、党執行部に権限が集中しました。その結果、党内で多様な意見を戦わせたり、独自の色を出したりすることが構造的に難しくなったと言われています。 - 「裏金問題」の温床
権力とお金が党の一部に集中しすぎて、チェック機能が効かなくなってしまったことへの反省があります。

2. ルールの違いは「椅子取りゲーム」で分かる
違いはとてもシンプル。「1つのエリアから、何人が当選できるか」です。
| サイズ | 名称 | 定数 | 勝ち抜きのイメージ |
| S | 小選挙区 | 1人 | 格闘技のタイトルマッチ (1対1の完全決着) |
| M | 中選挙区 | 3〜5人 | オーディション最終審査 (上位に入れば合格) |
| L | 大選挙区 | 2人以上 | 全員参加のサバイバル |
※法律上は「小」か「大(2人以上)」の2種類しかありませんが、日本では3〜5人のサイズを特別に「中選挙区」と呼んでいます。

3. なぜ「大」ではなく「中」が議論されているの?
「今の小選挙区(Sサイズ)は、死に票が多すぎる!」という批判があるなら、いきなり「大選挙区(Lサイズ)」にすれば良さそうですよね?
しかし、Lサイズ(全県1区など)には「広すぎる」というデメリットがあります。
- お金がかかりすぎる
エリアが広すぎて、資金が必要。 - タレント化する
タレント候補が圧倒的に有利になる。
そこで浮上したのが、かつてのMサイズ(中選挙区)です。 ただ、ここで一つ重要な歴史的事実があります。
かつての中選挙区制は、「最もお金がかかる制度」とも言われていました。
同じ党のライバルと差をつけるために、お中元・お歳暮、後援会旅行などの「サービス合戦(利益誘導)」が過熱したからです。
「じゃあ、中選挙区に戻ったらまた金権政治になるの?」と不安になりますよね。
ここが、昭和と令和の決定的な違いです。 現在はコンプライアンスが厳しくなり、昔のような「お金やモノを配る活動」は即アウト(法律違反)。
つまり、「お金配り」という武器を封じられた状態で、身内のライバルと戦わなければならないのが、新しい中選挙区制の正体なのです。

4. もし「中選挙区」に戻ったら? 候補者の戦略はどう変わる?
候補者にとって、サイズ変更は死活問題です。特に「中選挙区」では、戦い方のルールが根本から変わります。
① 「味方」が最大の「敵」になる(同士討ち)
- Sサイズ(決勝戦)
敵は他党。「自民 vs 立憲」のような、分かりやすい対決です。 - Mサイズ(オーディション)
敵は同じ事務所(党)。「同じ党の公認候補3人」が並び立ちます。
すると有権者は悩みます。「政策も党も同じ。じゃあ何で選べばいいの?」と。

② 「お金」による差別化から、「デザイン」による差別化へ
かつては、そこを「お金(サービス)」で解決も!?。
しかし今はそれができません。
そこで唯一の差別化要因となるのが、「候補者個人のブランド力(世界観)」です。
想像してみてください。ポスター掲示板に、同じ党の候補者が並んでいます。
- 党のイメージカラーは同じ。
- 党のキャッチコピーも同じ。
- 訴えている政策(党公約)も同じ。
この状況で、有権者に「この人だ!」と選んでもらうにはどうすればいいでしょうか?
単に顔写真を載せるだけでは埋もれてしまいます。
「優しそう」「頼れそう」「革新的」「実直」……
そうした「あなたの個性」を一瞬で伝えるデザインの力が、かつてないほど重要になるのです。

③ 「ドブ板」の質が変わる
地域を回る活動(ドブ板)も重要ですが、単に回数だけでなく「どんな印象を残すか」が問われます。
名刺一枚、リーフレット一枚のデザインの質が、「ただの党の人」で終わるか、「魅力的な個人」として記憶されるかの分かれ道になります。

まとめ:選ばれるのは「政党」ではなく「候補者個人」になる
制度が変われば、勝つための「装備」も変わります。
- 小選挙区(S)
「党の風」に乗れば勝てる可能性がある。 - 中選挙区(昭和)
「お金と派閥」の力があれば勝てた!? - 中選挙区(令和)
「個人のファン」を作った人が勝つ。
もし中選挙区制が復活すれば、党の看板や組織の力だけに頼りきりの候補者は淘汰されます。
お金で票を買うことができない今、最大の武器は「あなた自身の魅力を、正しくデザインして伝えること」です。
これからは、党の看板がなくても「あなただから投票する」と言ってくれるファンを増やすための、戦略とツール制作がますます必要となります。
選挙区の定義について(公職選挙法)
公職選挙法には「中選挙区」という文言は存在しません。
1人を選出するものを「小選挙区」、2人以上を選出するものを「大選挙区」と定義しています。
しかし、1947年から1993年まで衆議院で採用されていた「1選挙区3〜5人」の制度があまりに長く続いたため、これを「中選挙区」と呼ぶ慣習が定着しました。
【参考】
制度の違いについて、図解や動画で分かりやすく解説されているサイトをご紹介します。
動画でサクッと理解する
- 【高校生のための政治・経済】選挙制度のメリット・デメリット
- 小選挙区と大選挙区の違いや、記事でも触れた「同士討ち」の問題点が分かりやすく解説されています。
【出典】
- 総務省|選挙の種類
- 国立国会図書館|選挙制度改革の経緯
- J-Stage|選挙制度と選挙戦略の変化に関する研究
公職選挙法の解釈について
記事でも触れられている通り、公職選挙法は非常に複雑であり、個別の具体的な行為が法に抵触するかどうかの最終的な判断は、選挙管理委員会や警察、裁判所が行います。
記事の内容は一般的なルールを正しく説明していますが、すべてのケースを網羅しているわけではありません。
読者が具体的な行動を起こす際は、必要に応じて専門機関に確認をお願いします。
投稿者プロフィール

- 代表
- 石川県出身。県立工業高校(デザイン学科)・デザイン専門学校を経て、金沢のデザイン事務所等で実績を積み2009年に独立。多くの広告や企業CIを手掛ける中、2000年頃より選挙広報の支援を開始。2022年5月に選挙専門のトーカク株式会社を設立し代表取締役に就任。写真撮影やドローン空撮が趣味
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